ベータカロチンでは、シス型とオールトランス型の違いがあります。ほとんどの合成物はオールトランス型です。天然のものは素材によってシス型とオールトランス型の含まれる割合が異なります。シス型のほうがよく吸収され体内への蓄積率が高いとか、オールトランス型のほうがビタミンAへの転換率が高いとか動物実験での報告がありますが、あまりよく分かっていません。またビタミンEでは、天然をdjアルファトコフェロール、合成をぶ1アルファトコフェロールとふつう呼び、やはり立体的な構造の違いがあります。正確には、天然フィトールを原料として化学合成すると、d‐アルファトコフェロールと7‐アルファトコフェロールが同じ量だけ得られます。この二つの混合物をぶ1アルファトコフェロールというのです。最近では、合成のフィトールを原料として化学合成し、8種類のアルファトコフェロールを得ています。こうして得られた合成のものと天然のものを比較すると、試験管の中での抗酸化作用の強さはどちらでも変わらないが、体内での強さは天然が合成の2倍あるという報告があります。この違いは、腸管からの吸収のされ方や肝臓から血液中に分泌される量の違いによると考えられています。ちなみに少しややこしいのですが、天然型のビタミンEというのがあります。これは合成されたd‐アルファトコフェロールのことであり、天然のビタミンEではありません。天然型と天然とでは違いがないということになっていますが、本当のところは、いまのところ誰にも分かりません。ほかのビタミンでも天然と合成の違いが分からないものがあります。現在分からないからといって全く同じものだとは限りません。立体構造の違いが分がらなかった時代には、実際に立体構造の違いがあっても、同じだと考えられていたのです。